下請けと搾取

読んでみた。
羽生さんの主張は、むしろ蛇足で大事なことを言ってる気がするけど「下請けは不利だから元請けしかやんないよ。元請けにいて業界を変えたいって人は、(自社の調達部門が生み出した)下請けの現実を知りなさい」で、一方ひがさんは「他部門はともかく、技術者はまず技術力をつけるのが最も大切」と言ってるのかな。話がかみ合ってないけど、それぞれの立場では間違ったことは言ってないと思う。

自分の問題意識でどう思うかという点で考えてみると、まず下請けについて。
顧客が出したお金を元請けと下請けで分配するわけだが、しばしば「下請けは搾取されている」という表現がなされる。対価は生み出した価値や、負担したリスクに応じた割合で分配されるのが理想なわけだが、対価が下請けが生み出した価値よりも著しく低い場合や、対価が低いにも関わらず失敗したときだけ責任をなすりつけられるような場合を、搾取と呼ぶことにする。SI業界の問題の一つは搾取だと思う。

分配率は元請けが決めるために搾取しやすい構造になっているわけだけど、それだけではない。
下請けという表現には、自主的な判断をせずに指示を仰いで作業を遂行するというイメージがある。請負業務は本来、作業内容を自分で判断すべきなのだが、元請けが仕様書を用意したり指示を出すという、実態が派遣になってしまっているSIの現場があって、それが人買いとか人月問題とかってことなんだと思う。下流の単純作業しかやらせてもらえないため、単価が安くなる。すなわち価値を生み出せていないからお金にならない。
さらには、人月単価が安くなると人員の稼働率を上げることを優先し、人が遊んでしまうことを恐れて不利な条件でも契約してしまうようになり、ますます低収益体質になる。

これを打開するには(a)元請けになる(b)上流工程をやらせてもらう、のいずれかになるが、前者の方がより難易度が高い。羽生さんのエントリを読んで、「もっともな意見だが、そんなに簡単に元請けになれれば苦労しない」と思ってる人も少なからずいるんじゃないだろうか。
新規の仕事を取ろうとすると「口座がないから取引しない」「実績がないから発注しない」「売り上げ高が低いから発注しない」と言われることが珍しくない。これは日本の悪しき商慣行なのかもしれないけど、発注者の立場に立てば、よくわからないところに発注するのはリスクが高いので、5%や10%安いくらいでは発注先を変えるモチベーションにならない気持ちはわかる。
そんなわけで、いきなり元請けしかやらないというよりは、既存の顧客の上流設計に食い込んでいく方向に舵を切っていくほうが現実的なんじゃないかなあという気はする。

そうするとどうやって上流設計に食い込んでいくのか、という話になるわけだが、そこで技術力の底上げとか、自社で基盤技術を持つことが必要になる。
というところでひがさんの話とつながった。