リスクを取らない技術者は報われない

だから技術者は報われない」について。
基本的に、技術者はがんばってるのに「経営者が社員の処遇を考えないから」「経営者が頭を使わないから」技術者は報われないって文脈なわけだけど、経営者がひどい例というのは最初の中村氏のケースだけで、あとは必ずしもそうとは言えない。


DRAMバブルがはじけ、日本の人件費も高騰してきた。そこで下流の製造工程に投資するのは控えてどんどん上流の設計工程へ向かおう、とか、物理設計の時代は終わり、これからは論理設計・言語設計の時代だ、というような大きな流れができた。しかし基盤技術に積極的に投資したインテルや韓国・台湾勢は高収益を上げ、日本メーカー各社には冬の時代が訪れた、というのが半導体プロセスの話だと思う。


結果的には半導体プロセスを軽視したのが失敗ということなのだろうけど、しかしそれは「経営者が頭を使わないから」なのだろうか?技術者が「これから半導体プロセスの革命が来るので、もっとここに投資しましょう」と強く主張したにもかかわらず却下され、アホな経営者が突っ走った結果なのだろうか?そんなわけない。


大手メーカーにはたいてい事業部長とかいうポストがあって、そういう技術者のトップが技術トレンドを分析して経営会議の資料を作っている(はずだ)し、それに少なからず技術者出身の経営者もいる。技術者が横並びで「これからは上流設計だ」と信じたからこそメーカーがこぞってそこに集中したというのが実情なのであって、結果失敗したのを「経営者がアホやから」などというのは、経営者からすれば「技術者はノーリスクで適当なこと言いやがって」ということになる。メーカーの敗北とはすなわち技術者の敗北なのに、それを経営者だけのせいにするなんて実にみっともない。蛇足だがこれは「日本の政治がひどいのは政治家が」ってのと同じ構図。


逆に言うと(報酬という点で)報われるためにはある程度のリスクを背負う必要があるわけで、終身雇用も崩れたことだし、技術者はもっと積極的に経営参加してリスクを取っていくべき。