福島第一原発の水素爆発についてのメモ

原子力安全・保安院の会見を見てもよくわからなかったので、以下を見て理解した気になってみた。

用語

  • BWR ... 沸騰水型軽水炉原子力で水を沸騰させ、その蒸気でタービンをまわして発電する。
  • 原子炉圧力容器 ... 水を沸騰させるところ。
  • 原子炉格納容器 ... 圧力容器を格納する部分。圧力抑制プールを含む。
  • 再循環ポンプ ... 圧力容器内の冷却水を循環させるためのポンプ。圧力容器の外側、格納容器の内側にある。
  • 圧力抑制室(トーラス) ... 格納容器の下部にある、水をためたプール。主な役割は圧力容器から来た放射性物質を含んだ水蒸気を、水に変えることで減圧して放射性物質を水に溶かすこと。

設計圧力と運転時圧力について

  • 原子炉圧力容器の設計圧力は約90気圧。運転時は約70気圧。
  • 原子炉格納容器の設計圧力は約4〜5気圧。運転時は1気圧弱。
  • 圧力抑制室の設計圧力は不明。通常は約3気圧。

圧力の単位について

報道発表資料は絶対圧とゲージ圧が混在していてよくわからない。

  • MPa ... メガパスカル(1気圧=0.101325MPa)
  • 絶対圧 ... MPa(abs) 絶対値でのメガパスカル
  • ゲージ圧 ... MPa(G) 大気圧との差。測定対象が大気圧より低い場合は負の値になる。報道資料にも負の値が載っているが、計器が故障している可能性もある。

1号機で発生した事象の推測

  1. 3/11 14:46 地震発生により核反応停止、配管に破断発生?
  2. 3/11 15:42 津波により冷却システムが全て停止
  3. 崩壊熱により圧力容器内の水がどんどん蒸発、気圧増加、燃料棒露出
  4. 燃料棒露出により水素発生
  5. 破断した配管により、圧力容器から格納容器へ水素がもれ、格納容器の上部にたまる
  6. 3/12 00:00頃 格納容器の圧力が設計圧力を超える
  7. 水素がフランジから上にもれはじめる
  8. 3/12 09:07 圧力を逃がすためベント操作を開始(失敗?)
  9. 3/12 14:00 1号機のバルブを開放
  10. 3/12 15:36 1号機の建屋が水素爆発

フランジについて

核燃料を上から交換できるよう、圧力容器と格納容器の上部は取り外せるようになっている。
円筒形の部品(これがフランジと呼ばれている部分)を載せてネジなどで固定する。溶接されているわけではないので、設計圧力を超えればもれる可能性がある。

水素の由来について

(a)燃料棒が溶けてジルコニウムが酸化(b)水蒸気からできた(c)一次冷却水に含まれた水素が遊離
の説があるようだ。
爆発後、セシウム(沸点678℃)が検出されているため、格納容器内が非常に(すなわちセシウムが蒸発するほどの)高温であった可能性があり、(a)ではないかと思われる。
一次冷却水については水素濃度は30ppm程度のようなので、爆発するほどの量になるとは考えにくい。

圧力抑制室がドーナツ状の理由

水蒸気爆発を避けるため、圧力容器の真下を空けておくためとのこと。

建屋の上部だけ吹き飛んだ理由の推測

建屋の一番上の部分は燃料を交換するためのフラットな作業領域となっている。スパン(柱と柱の間の距離)を長く取るため、軽くする必要があり、コンクリートの厚みが最低限しかない。そのため薄い部分が吹き飛んだ。

設計の古さについて

再循環ポンプは非常に重く(10t以上)、耐震設計の弱点となっている。改良された軽水炉では、再循環ポンプがないものもある。

人災について

「素人が造る原発」は大げさな表現ではあるが、実際、異物は割とよく落ちているようだ。(福島第二原子力発電所 圧力抑制室からの異物回収状況)
想定外の地震にも耐えた原子炉のハードウェアは設計・施工とも高いレベルであると言えそうだが、津波で電気系が全滅するのは設計上の欠陥だと思った。電気が止まると水素爆発するのは(人災ではなく)構造上の必然だが、設計上の欠陥を放置したのは人災だと感じた。

感想

巨大な津波が来れば非常用電源が使えなくなるのは過去に専門家が指摘しており、その場合には爆発することを東京電力は予め知っていたのではないか。その上で、格納容器は無事だろうという結論に達していたのではないかと推測する。
マークIは設計も設備も古いため、廃炉が妥当と考える。原発反対運動のため新規建設ができず、危険な旧式の炉を延命していたというのが皮肉だと思う。