ムーアの法則の寿命

この前のカーネル読書会牧野先生のスライド

  • スパコンは1992頃までゆっくり進化し、1993に革新、1995以降衰退した
  • x86マイクロプロセッサの進歩はスーパーコンピューターの進歩を20年遅れで追いかけている
  • もし同じ流れが来るなら、マイクロプロセッサは2010-2015に革新があり、2015以降衰退する

という予想があった。その場で周りの人と話題になったのが「ムーアの法則は今後も存続するか」というお題。

「製造プロセスの限界が来ているのでもうだめ」という意見が多いのかなとなんとなく思っていたのだけど、id:hyoshiok氏らが「10年後にCMOSの限界が来るというのは30年前から言われている」「単純に微細化するだけでは限界がくるが、それを打ち破る何かが考案される」というポジティブな意見を出してきた。

確かにエンジニアとしては常にブレークスルーがあるという前提で向かっていくことは大切だと思うのだが、それはそれとしてある技術というのは必ず「枯れる」ものだ。すなわちムーアの法則が成立している期間というのはマイクロプロセッサが枯れていないことを示していると思う。

そんなわけで、ふと思い立ってムーアの法則は実際のところ成立しているのかどうか適当に調べてみた。
ターゲットとしては、同じメーカーでずっとx86ということでNECのビジネス向けパソコンを選んだ。最高機種の次くらいの売れ筋の機種を入れてある。


MIPSは処理速度の値で、Pentium以降はMIPS値ではなくi486DXに対するSPECintの値(ぽいもの)が入っている。
C/Pは処理速度/価格比。この表だと単純に言えば、同じ価格で入手できるプロセッサパワーが25年間で6万倍になっている。


青は18ヶ月で2倍(一年間に1.59倍)になる割合。紫はC/Pをそのレートで対数プロットしたもの。
大雑把にはi486DXの採用(1992年)と同時に急上昇しはじめ、Core2Duoが出るまではどんどん上昇し、低価格化。Core2Duoではパワーも価格も上昇したため頭打ちに。

ここ数年だけで見ると、Pentium4の時代が長く、特に2.8GHzの機種は3年くらい現役にとどまっていた。さすがに今は消えたが、スペック的には現行のCeleronの低価格機のものとほとんど変わらない。

というわけでローエンドのビジネス機は枯れたと言ってよいのではないかと思う。ハイエンド機の処理速度も、消費電力が重視されるご時世なので一年に1.5倍というペースには載らなそうである。まあそれはあと2〜3年してみないとわからない。

おまけとして、CPUBENCHというDOS用のベンチマークがあり、これは初代PC-9801に対する処理速度を出してくれるのだが、Core2Duo機で実行したらDivide errorとなった。もしかして10ms以内にループが終わってしまうからかもと思い、逆アセンブルしてタイマー周期を短く書き換えてみたところ、2GHzのCoreDuo機で何回か試行したうち一回だけ実行することができて
Ratio to the first PC9801 : 691.0
Execute time : 00.10sec
という結果だった。やはり何千倍か速いようだ。速さは力。